copyright:燐光群/石坂啓
俳優座劇場にて「民衆の敵」を見る。俳優座劇場は好きな小屋の一つだ。
燐光群→■
民衆の敵→■
内容としては、イプセンの「民衆の敵」を坂手洋二が組み直したものだが、面白かった反面、軸のブレが気になった。
民衆の敵→■、→■
前半のパーティ部分で、強調されるべきであるものは、「若さ」を中心とした「調子の良さ」「正義感」「まっすぐさ」「やや視野狭窄なところ」であり、後半に繋がる「町長と博士の対立」であるのだが、それが明確でない。
また、「町長と博士の対立」軸を支え、別のテーマでもある「新聞社と町長の対立」も、もっとはっきりしていていい。
パーティ部分で、音楽を派手に慣らして、大騒ぎするくらいの状態で、町長とのギクシャクした関係や各自のキャラクターを明示した方が面白いと思う。
(「これがわかって姉さんは喜ぶはず」「私は大発見」など、博士の言っていることが、明らかにおかしいのも気になった)
□オレサマだったらこうしたい物語の軸
1:パーティのシーン・無駄に大盛り上がり。ここでは、博士が大変に魅力的な多間として描かれる。言っている事がまっすぐで、矛盾点が無い。多々は博士に心酔している。
・そこへ町長登場。多々に少し微妙な空気が流れる。だが、博士と町長の関係は良好(博士→町長)で、歓迎する。
・町長と新聞社との対立。編集長が、色々と食べ物を勧めるも、あっさり断る町長。こちらが折れて遣っているのに、不満げな編集長。
・町長と博士の喧嘩。
・町長帰る。
・郵便が届く。
・姉さんはこんなことを隠していると、博士が町長を批判。そこから政治批判へ。
2:新聞社のシーン
・町長の巻き返し。現実的に無理だということを演説。
・ドタバタと多々は町長派へ
3:演説のシーン
・町長派ばかりの議会
・博士が演説すると、博士派へ。
・しかし、博士が大衆〜の話をして、一気に反博士へ
・コート破れる
・民衆の敵決議へ。このころから、流石に不味いという町長の表情
4:博士の家
・もう少し早回しで、多々の思惑が明らかになる。
・町長は、それまで博士と対立していたものの、決議によって流石に、妹を心配する姉の顔へ。
・町に留まる決意
坂手洋二は、性別を入れ替え、男を女に女を男にしているが、それは秀逸だった。
正直、色々な新劇で「こんな奴いないだろ」という外多が多く登場し、しかもそれを掴みきれずに胡散臭く演じられていることには辟易としていたので、性別を入れ替えることによって、変なバイアス(ステロタイプな多間像)を無くしたのは良かった。
これは、それに答えられる役者が居なければ、なかなか難しいので、良く書けたものだと思う。
(しかし、編集長→娘の同性愛はもう少し踏み込んでもいい。パーティのシーンで、娘をウハウハと迎えたり、船長を蹴飛ばして意地悪するくらいの、コメディっぽさが欲しい。そして、天然な娘はそれに気付かず「私が目的だったの!!」。これは、同性愛だからというよりも、ヨコシマな心のある恋愛をコメディとして描くのに必要だと思う)
役者としては、猪熊恒和がまたも全然違うキャラクターで吃驚した。凄い。雰囲気をあそこまで別多に出来る役者は凄い。
マリさん(と馴れ馴れしく呼ぶオレサマ。マリさんラブ!!)のケープ姿がカワイコだ。らぶりーだ。そして、大浦みずきとの絡みをもっとみたい。大浦みずきも良い役者だが、まだ燐光群と馴染んでない感じがした(特にコメディ部分)。新聞社で、燐光群の役者のみのシーンが安心して見られてしまうのは、少々残念だ。ただ、燐光群にあまり無い(失礼)華があり、大変良かったので、もっと何回も袖演して絡んで欲しい。(マリさんと踊るところにウケタ。社長と踊るところも良かった)
……俳優座劇場で、フライドポテトを熱烈に食いたかった。
くそう。
今度行ったら食うぞ。